当院では、日本歯周病学会専門医による歯周病の専門的な検査と治療を行っております。そして、治ったところがゴールではありません!そこから再発させることなく、ご自身の歯で一生おいしく食べて、幸せな人生を歩むことが最大の目的です。歯科医院は、そのお手伝いをする存在です。そのための予防プログラムにも積極的に取り組んでいます!
歯周病について
歯周病ってどんな病気でしょうか。インターネット記事やテレビCMなどで、頻繁に耳にすると思います。少し前までは歯槽膿漏という名前で呼ばれていましたが、具体的にどんなよくないことが起こるのかお分かりですか?
歯周病は、歯ぐきの中に歯周病原菌と呼ばれる細菌が侵入し、徐々に増殖してその毒素が歯ぐきやその周りの骨を破壊してしまう恐ろしい病気です。
歯周病の厄介なところは、多くの場合、かなり進行するまで痛みが出ないことです。気づいたときには大きく進行してしまい、気が付けば歯がグラグラになって抜けてしまうところまで至ります。
逆に言えば、早めに見つけることによって治療を行い、進行を食い止め、さらに予防行うことができます。
症状が出にくいが故に、30代以上の70%を超える人に歯周病が認められます。日本は「歯周病大国」と呼ばれています。
私たちが目指すのは、患者さんと一緒に歯周病が治ったあと、ご飯がいつまでも美味しく食べられて豊かに幸せに暮らしてもらうことです。
歯周病の進行度合い
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歯周病が進行した状態
歯周病が進行した歯ぐきです。赤く腫れ上がり、容易に出血・排膿します。
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重度の歯周病
さらに進行した状態です。歯がぐらぐらになって抜け落ちてしまいました。
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治療後
歯周病治療後の歯ぐきです。引き締まり、健康なピンク色です。
歯周病は自覚症状を生じにくい病気
歯周病はむし歯と違い、一般的には自覚症状が出にくい病気です。糖尿病のような生活習慣病に分類されます。
歯周病の最初の症状としては歯茎からの出血やちょっとムズムズする感じなどになります。人によっては、それすら自覚することがなく進行することもあります。多くの場合生活に支障をきたさないレベルなので歯科医院にかからないまま進行してしまいます。
徐々に痛みや口臭などの不快な症状に進行していき、気がつけば重症となり、最悪の場合歯がグラグラになって抜け落ちてしまいます。
症状がなくても歯を一生もたせるためには、歯科医院で精密検査や定期検診を受けることをお勧めします。
歯を失う最大の原因は歯周病
人生において歯を失ってしまう原因の第1位は歯周病です。30代から進行が顕著になり40代から歯を失ってしまう比率が高くなっていきます。また歯周病原菌が発する毒素は強い悪臭を放ちますので、そのまま口臭に直結します。適切な治療を行うことによって歯を守り、口臭の改善も見込むことができます。
歯周病と全身疾患の関係
近年世界的な研究により歯周病は全身の病気と大きく関係していることが証明されています。お口の中の病気となぜ関係が?と思うかもしれません。実は歯周病原菌が産生する毒素は、歯ぐきの血管に入って全身を巡り、あらゆる不具合を起こしていきます。代表例としては糖尿病、心臓病、認知症、早産、関節リウマチ、肥満などです。逆に考えると歯周病の治療を適切に行い予防することによってこれらの病気も予防することができます。
歯周病チェックシート
代表的な症状を、以下にまとめました。
ひとつでも当てはまる場合、早期の受診・検査を強くお勧めします!
- 歯ぐきが腫れている
- ブラッシング時に血が出る
- 口臭が気になる
- 口を開けたまま寝てしまう
- 口の中がネバつく
- 歯と歯の間に隙間ができた
- 歯がぐらぐらする
- 歯ぐきから膿みが出る
- 歯ぐきがやせてしまい、歯が長くなった気がする
歯周病検査から治療までの流れ
歯周病は、歯肉炎→軽度歯周炎→中等度歯周炎→重度歯周炎という段階を経て進行します。検査から治療までの流れは以下のようになります。
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STEP 01
口腔内写真の撮影
歯ぐきの腫れ、歯石やプラークの沈着、噛み合わせの不正を確認します。
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STEP 02
エックス線検査
歯周病によって歯を支える骨がどこまで壊されているか、歯にむし歯がないか、修復物がしっかり合っているかを確認します。
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STEP 03
歯周ポケット検査
歯と歯ぐきの間の溝を1本の歯に対して6か所(28本なら168か所)測定し、歯周病の進行程度を精密に把握します。
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STEP 04
診査・診断
前述の各種検査を行い、歯周病の進行度を判定します。
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STEP 05
カウンセリング
同じ歯周病でも、患者様ごとにタイプや重症度はすべて違います。生活背景や歯科への考え方、どんな人生を送っていきたいかまで含めてしっかりお話する時間です。現在の状態、どんな治療をすれば治癒に向かうか、患者さんと歯科医院で共有して一緒に進むための大切な時間です。
歯周病は、「口の生活習慣病」と考えられています。歯周病の原因であるプラーク(歯垢=細菌の塊)を取り除くことが最も重要な治療です。ここまでのSTEPでの撮影結果や検査結果をもとに、カウンセリングを通じて、患者様の状態をふまえた治療方針を考えていきます。
当院のカウンセリングの考え方をまとめている「ドクターインタビュー」ページもあわせてご覧ください。
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なお、歯周病の原細菌にはさまざまな種類があります。先人の多くの研究により、特に病原性の強いものや細菌どうしを媒介するものなど注意すべき細菌が分かっています。
注意すべき歯周病菌
- P.gingivalis
- T.forsythia
- T.denticola
- A.actinomycetemcomitans
- F.nucleatum
- P.intermedia
上記のものが特に病原性が強いとされる細菌です。
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STEP 06
歯周基本治療
歯周病原細菌の排除と再発させにくい環境を作ることを目的として、歯科医師および歯科衛生士によるブラッシング方法の説明と実践、専門的な歯石や原因物質の除去を行います。むし歯の治療などもここに含まれます。
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スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
歯科医師、歯科衛生士が専門的な器具を用いて歯石を除去します。歯石の中には歯周病原細菌が大量に生息しており、放っておくと他の部位に伝播していきますので、一定の期間で全体的に除菌することが重要です。
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STEP 08
咬合回復治療
歯周病が改善したら、再発させない環境を作るため、良好な噛み合わせを構築します。歯周病の治療が成功すれば、より質の高い噛み合わせを作ることができます。
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STEP 09
メインテナンス
治療が終了し、治癒したことを一緒に大いに喜びましょう。そのあとで、メインテナンスに入ります。そこから先の長い人生を、健康な状態でもたせることが難しいのです。もし問題が発生したら早期に対応できるよう、定期的な検査とクリーニングを行います。医学的には、3か月に一度程度が細菌の増加を防止できるとされています。
再生療法
歯周病によって破壊される組織は、歯周組織と呼ばれる4つの構造物です。具体的には歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨になります。これらの組織が細菌の産生する毒素により破壊を受け、正常な状態を保てなくなるために痛み、腫れ、膿み、出血、歯の揺れなどの顕著な症状が発現します。
歯周治療の基本的なコンセプトは、原因となる細菌、また産生された毒素を専門的技術により取り除くことです。これにより組織は治癒に向かい、元通りの健康な生活を送れるようにすることが歯周治療の目的になります。
しかし、長期間にわたる感染の末、本来あった健康な組織は少なからず失われてしまいます。最も重要なのは歯槽骨、すなわち歯を支える骨です。この骨をいかにして保存するかが歯の寿命を左右します。せっかく細菌がいなくなっても、残った骨が少量であれば力学的に負けて長くもたないことも考えられます。
そこで、再生治療という方法があります。適応症は骨の失われ方によりますが、十分な検討のうえで行えば失われた骨を再生させることができます。以下の方法があり、場合により組み合わせて使用します。
- 骨移植術
- ご自身の口腔内の他部位から骨を採取し、失われた部分に補填する自家骨移植が最も効果が高い方法です。その理由として、自己の組織は生体が拒絶反応を示さないためです。また、異種骨や人工骨を補填し、組織が長い時間をかけて自分の骨に置き換えることを期待する方法もあります。
- エムドゲインゲル®
- 胎生期に歯が体内で生えてくるメカニズムを応用し、失われた歯槽骨の再生を促します。術後感染のリスクが低く、非常に良好な治療効果が期待できます。
リグロス®
リグロス®は、歯周組織の再生治療に使用可能な医薬品です。 中等度以上の歯周炎に対し、適切な条件下であれば失われた歯周組織の再生を促します。
組織の再生には、「細胞・足場・成長因子」の3要素が必要とされています。リグロス®(一般名:トラフェルミン)は、この成長因子と呼ばれる成分であるbFGF(線維芽細胞成長因子)により構成されています。 元々は、病床で生じた褥瘡に対する薬の成分として開発されたのがトラフェルミンです。表皮や血管の新生、治癒を促進します。
一般に、歯周炎により歯ぐきの炎症が生じ、さらに歯を支える骨(歯槽骨)が壊されると失われた骨を再生することは困難です。しかし、bFGFの働きによって失われた部分に血管の新生が生じ、その血管を土台にして徐々に幼若な肉芽組織が形成され、そこから骨に置き換わっていきます。
歯周外科治療の一部となりますので、まずは精密検査での診断、そこに至るまでの基本的な治療をすることが必要です。その上で、適応症であれば非常に有効な治療法となります。
フルマウス・ディスインフェクション(FMD)
通常、日本における歯周治療では口腔内を4回~6回に分け、徹底的に病原物質の除去を行います。軽度から中等度の歯周病であれば、この基本的な治療で十分に治癒が期待できます。
しかし、重度の歯周病の場合や来院期間が長期間空いてしまう場合、また全身疾患のため何度も治療を行うことが困難である場合などには大きな問題が生じます。歯周病原細菌は、口腔内の他部位に移り住むのです。つまり、治療した部位と治療していない部位があったとき、せっかく治療したところがまた感染してしまいます。
これを防ぐため、口腔内のすべての部位を2回に分け、24時間以内に完全な除菌をする方法があります。これをフルマウスディスインフェクション(FMD)と言います。あらかじめ術前に歯周病原細菌に効果のある抗菌薬を内服していただき、病原物質の除去を行います。すると、住みかを失った細菌は一気に取り除かれ、残った細菌も歯周ポケットを漂いますので、全身の血流にのった抗菌薬が歯肉の血管から出て効果を発揮します。
重度の歯周病の治療や、治療期間を短縮したい場合には非常に高い効果が期待できます。施術に際しましては現状でどのような細菌が存在しているか、前述の細菌検査を行うことが必要になりますので、ご相談ください。